大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 平成2年(行ツ)73号 判決

上告人

株式会社大久保製壜所

右代表者代表取締役

大久保保

右訴訟代理人弁護士

中村健

被上告人

東京都地方労働委員会

右代表者会長

古山宏

右補助参加人

東京東部労働組合大久保製壜支部

右代表者執行委員長

杉田育男

右補助参加人

杉田育男

右補助参加人

長崎広

右補助参加人

橋本正利

右補助参加人

柏崎勇七

右補助参加人

鈴木銀一郎

右補助参加人

羽野澄夫

右補助参加人

千葉辰雄

右補助参加人

石井和男

右補助参加人

善場伸一郎

右一〇名訴訟代理人弁護士

笠井治

右当事者間の東京高等裁判所平成元年(行コ)第七一号不当労働行為救済命令取消請求事件について、同裁判所が平成二年二月二一日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立があった。よって、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人中村健の上告理由について

所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。

よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 藤島昭 裁判官 香川保一 裁判官 中島敏次郎 裁判官 木崎良平)

(平成二年(行ツ)第七三号 上告人 株式会社大久保製壜所)

上告代理人中村健の上告理由

第一点 原判決は、昭和五一年九月二五日に発生した補助参加人組合所属組合員による上告人会社事務所不法占拠事件及び右一部組合員の無断職場離脱行為に対して、上告人のなした懲戒処分を不当労働行為と判断しているが、これは暴力行為を正当な組合活動として容認するに等しいものであり労働組合法第七条一号、三号の解釈適用を誤った著しい法令違背であり、判決に影響を及ぼすべきことが明らかである。

一 右懲戒処分について原判決は、「九・二五トラブルの直接の原因が、さしたる必然性もないのに新勤務体制を一方的に発表し実施を強行した上告人会社にあることを棚に上げ、専らトラブル当日における長崎らの個々の行為のみを取り上げて責任を追及したものであって、処分の内容がそれほど重いものではないことを考慮しても、バランスを欠き公正ではないといわざるを得ない。」として、右懲戒処分は不当労働行為であると判断している。

二 管理部検査課組編成替実施の必要性について原判決は、「さしたる必然性もない」と判断しているが、右判断は全くの独断である。右必要性については、被上告人のなした原決定においてさえも、「当時取引先からの返品が多発し、上告人会社が非常事態下にあり、これに対処する為に新勤務体制をとるに至った」旨を正当に認定しているものである原決定書二七ページ)。

上告人会社の製品は医薬品及び化粧品に使用されており、とりわけ、医薬品用の製品の品質については、品質の向上とその対策、改善につき、各取引先より常日頃から厳しい要請がなされてきたが、昭和五一年七月頃より品質不良を理由とする返品が取引先より相次ぎさらに、品質向上の対策についても具体的なる改善方法の提示を要求され、取引先より立入調査を受ける事態に至った。

上告人会社にとって返品及び立入調査を受けた取引先が会社の主取引先であり、この取引先を失うことになれば会社の存立自体にも直接影響する重大問題である為、管理職を含む従業員に総動員をかけて返品分の処理に当たるとともに、品質の低下は製造部門に直接の原因があるにしても、最終的には検査部門で不良品を完全排除することが当面の課題として、その対策を検討した。当時、上告人会社においては三組三交替制をとっていたが、抜本的には製造部門のより一層の機械化及び検査課の機械化の達成と四組三交替制の採用によりこの問題を解決する方針を立て、これに要する六月間の期間を非常態勢下の暫定措置として、検査課三組の能力の均等化を図るべく検査課の組編成の編成替を企画し、昭和五一年九月一八日新しい組編成表を掲示したものである。

三 説明会中止について原判決は、「出席者を五名に限定するとともに、条件として設定した出席者の氏名が当日までに提示されないことを理由にその開催を拒否したものであり、上告人会社の対応に誠意を欠くところがあったことは否定できない」と認定している。

上告人会社の業務は二四時間操業の終夜業であって、説明会開催予定時間は当然就業時間内である為、出席者を限定すること及び出席予定者を予め把握することが上告人会社にとって業務遂行上必要不可欠である。このことは、大労組との労使協議会、補助参加人組合との団体交渉が総べて、出席者を限定し、事前に出席予定者が書面にて提示された上で、円滑に運営されて来たことからしても、明らかである。本件有志代表はすべて補助参加人組合員であることを併せ考慮すれば、従来の労使慣行として確立していたとも言い得る出席者の限定と事前提示の条件設定はなんら非難されるべき問題ではない。右条件についての回答が指定期日までになされなかった為、上告人会社は右有志代表なる団体が説明会への出席自体を中止したものと判断し、他の予定行事を繰入れたものであって、上告人会社の判断になんらの違法、不当性はなく、対応が誠意に欠けるものと非難されるいわれはないものである。

現実に、九・二五当日の補助参加人組合所属組合員の勤務割をみると、二部勤務予定者二名(柏崎、黒崎)、三部勤務予定者三名(長崎、羽野、鈴木銀一郎)計五名が就労を予定されていたのであるから、就労予定者が説明会出席の場合には、代替要員の確保等の必要があり、説明会への出席予定者の事前提示は、上告人会社の当日の業務遂行上必要不可欠であったことは明らかである。

原判決は「九・二五トラブルによって特に生産に影響があったとも認められない」と認定しているが、九・二五トラブル当日の検査課の職場においては、二部勤務、三部勤務を通して計五名の就労予定者が予告なしに欠務した為、工場長を含めた管理職と大労組組合員の協力を得て急場をしのいだ結果、生産に支障を来す事態を回避することができたことによるものである。

四 右事実経過を詳述すると、前記組編成替表を掲示した昭和五一年九月一八日午後九時頃、二部勤務の管理職に対し補助参加人組合所属の組合員が管理職を取り囲み、抗議と称して吊るし上げがなされた。

従来より、上告人会社は組編成の編成替等については、検査課所属の組長を通じて各組員に内容の説明を行っていたので、今回の組編成替についても各組長を通じて各組員に説明させるべく、昭和五一年九月一九日午後三時頃管理部長が各組長に説明を行なっていたところ、補助参加人組合所属組合員がこれを取り囲み抗議と称して吊るし上げを行ったので、組長への説明自体十分に行うことが不可能となった。そこで、上告人会社としてはいたずらな紛争を回避する為、昭和五一年九月二〇日補助参加人組合に対し、正式に団体交渉の申し入れがなされればこれを受ける用意がある旨文書で通告したところ、補助参加人組合からは、同年九月二二日検査課従業員有志代表杉田育男名義で団体交渉の申し入れがなされた。

右申し入れを受けた上告人会社は従業員有志とは団体交渉は開かない、従業員有志に対しては検査課内の苦情処理として左記条件を付して、同年九月二五日に説明会を開催する旨を同年九月二二日文書で回答した。

有志出席者は五名以内とする。

出席者の氏名を九月二四日までに上告人会社に提示すること。

同年九月二三日、再度有志代表より団交要求があり、九月二四日上告人会社は九月二二日付回答書の趣旨にしたがい再度同趣旨の回答をなしたが、説明会開催予定日の九月二五日朝になっても従業員有志代表よりの説明会出席者の氏名の提示がなかったので、従業員有志側において説明会への出席を中止したものと判断し、上告人会社は当日、前からの予定になっていた上告人会社関連会社のグループ会議を開催することとした。

ところが、当日午後四時五五分頃補助参加人組合所属組合員等が大挙して上告人会社に押しかけ「団体交渉をひらけ」、「説明会をひらけ」と口々に大声で騒ぎ始めたので、上告人会社人事部次長が応対し、「本日は団交の予定はない。本日予定していた説明会は出席者の氏名の提示が期日までになされなかったので開催しない。要求があれば正規の手続きを採って上告人会社に申し入れをしなさい」、と説得したが補助参加人組合員は執拗に、団交、説明会の開催を強要した。人事部次長は補助参加人組合に対し「説明会を開催できない理由を説明するから二名代表を出すように」と再度事態を収拾するために発言したが補助参加人組合所属組合員は益々大声で怒鳴り騒ぎが拡大するばかりであった。事態を憂慮した人事部次長はやむなく補助参加人組合所属組合員に対し、会社構内よりの退去を命じたが、補助参加人組合員等は退去命令を無視し、集団で上告人会社事務室になだれこみ、最終的に同日午後一一時頃上告人会社側が補助参加人組合員等を排除するまで上告人会社事務室に不法に滞留し、その間、暴行脅迫的言辞をほしいままにし、会社の業務を阻害したものである。右のとおり本件検査課の組編成替については、上告人会社の存立にかかわる非常事態下の暫定措置として採ったものであって、その内容について、従業員に或る程度の犠牲を強いるものがあるとしても、労使の話合いで十分解決し得る問題であって、当初、上告人会社は従来の組編成替の説明と同様に組長を通じて各組合員に説明すべく手続きを採ったが、補助参加人組合の抗議と称する吊るし上げにより説明が不可能となった為、上告人会社はいたずらなる紛争を避ける為補助参加人組合に対し不満があるならば正規の団体交渉の要求をなすべき旨文書で申し入れを為したものである。当時、上告人会社と補助参加人組合間においては正常なる労使関係が継続しており、総べて団体交渉にて諸問題は解決されていた。

上告人会社と補助参加人組合の団体交渉が途絶するに至ったのは、本件について開催された第三回目の昭和五一年一〇月一二日の団体交渉の席上で補助参加人組合の暴力事件を契機にしたものであり、少なくとも、本件昭和五一年九月二五日の補助参加人組合の不法占拠事件までは上告人会社と補助参加人組合間の労使関係は正常であり、本件事件後も三回にわたる団体交渉が開催され、補助参加人組合の上告人会社側団交出席者委員に対する暴力行為により団体交渉が途絶するに至るまでは上告人会社と補助参加人組合間においては総べて話合いによる解決が可能であった。ところが、補助参加人組合は上告人会社の申し出に対し、検査課の従業員有志による団体交渉要求という戦術を採ってきた。上告人会社においては、補助参加人組合の外、大多数の従業員の加入している大久保製壜所労働組合の二組合が併存しており、懸案は総べて会社と二組合との交渉により解決すべきであるし、現にこれまで総べて二組合との交渉で解決してきたのであるから、上告人会社は従業員有志との団体交渉は当然、必要性なしと判断して、これを拒否し、従業員有志にこだわるならば、職場の苦情処理として説明会を開催する旨通告したものである。不思議なのは、右従業員有志の中に補助参加人組合が含まれているとのことであり、有志代表者は総べて補助参加人組合所属組合員であることである。補助参加人組合がこのような複雑なる戦術を採ることなく、補助参加人組合として団交の要求をなしていれば、本件九月二五日の不法占拠事件は当然なかったものと考えられる。補助参加人組合は昭和五〇年一二月争議の再来を狙って職場集会戦術を採り、上告人会社に再度混乱を生じさせるべく計画的に本件不法占拠事件を惹起させたものであり、上告人会社が補助参加人組合の戦術を回避し、説明会を開催する旨通告したことは、上告人会社の従来の労使関係からして当然の措置と云うべきである。

上告人会社は前記のとおり条件を付して説明会を開催する旨従業員有志なる団体に通告しているが、上告人会社の付した条件は説明会の前日までに出席者の氏名を提示することと、出席者の数を五名に制限したことの二点である。前記のとおり上告人会社は終夜業であり、説明会開催予定時間は当然就業時間内であるため、出席者を予め把握することが上告人会社にとっては業務遂行上必要不可欠である。補助参加人組合を含む有志代表なる団体から右条件についての回答がなされなかった為、上告人会社は右団体は説明会への出席自体を中止したものと判断し、他の予定行事を繰入れたものであり、上告人会社の判断、措置には何等の違法性、不当性はない。しかるに、補助参加人組合所属の組合員は九月二五日午後四時五五分頃より上告人会社に押しかけ口々に「団交をひらけ」、「説明会をひらけ」と騒ぎを起こし、上告人会社事務所を不法占拠するに至ったものであり、この責任は総べて補助参加人組合及びこれに参加した組合員各個人にあることは明白であり、前記職場集会戦術により上告人会社に混乱を生じさせることを狙っていた補助参加組合が、上告人会社の説明会を開くとの措置により戦術を転換し、計画的に本件騒動を惹起したものというべきものである。

五 本件懲戒処分の対象である九・二五トラブル当日の行動について原判決は、「有志代表は会社側管理職と押し問答を繰り返した」、「有志代表は会社側管理職に罵声を浴びせた」、「説明会を開くよう訴えた」程度の認定に終始しているが、当日の補助参加人組合員らの行動は右認定にあるが如き生易しいものではない。

昭和五一年九月二五日午後五時頃、補助参加人組合所属組合員が上告人会社守衛所付近に続々集合し、応対した上告人会社人事部次長大久保保に対し、「説明会をひらけ」、「団交をひらけ」と口々に大声で騒ぎ、同次長を罵倒するなどし、騒ぎを聞いて駆けつけた上告人会社人事課長能登谷明に対しても雑言を浴びせ、守衛所付近が混乱と喧騒に陥った為に右大久保保次長はやむなく補助参加人組合員に対し上告人会社構内からの退去を命じたが、補助参加人組合員はこれを無視し、右大久保次長等が事務所に引上げようとしたところ、これを阻止しようとして補助参加人組合員らが追いすがり、上告人会社事務棟二階の事務室に至る階段踊場で右能登谷課長に対し、補助参加人組合副委員長長崎が中心となって「人間かおまえ」「弱虫」等と吊し上げを行い右大久保次長等により右吊し上げから救出された能登谷課長が階段を駆け上がって二階事務室に入ってドアを施錠したところ、長崎、橋本、杉田を中心とする補助参加人組合員がドアの施錠を壊して事務所内に雪崩込み、同日、午後七時三〇分頃第一回排除、午後一一時頃第二回排除により、上告人会社側人員により実力排除されるまでの間、約六時間の長時間に亘り、補助参加人組合員が上告人会社事務室を占拠し、その間、上告人会社管理職その他会社側人員に対し、雑言、罵倒をほしいままにしたものである。

右ドアの鍵の破損について原判決は、「ドアをこじ開けて中に入った上……」、「ドアの鍵を破損して大勢で二階事務室に入り……」と正当なる認定をなしながら、一方において、「鍵の破損についての責任の所在は裁判上確定していない……」、「鍵の破損は一連の抗議行動の中で偶発的に生じたものとみてよいもので、損害額も四、五〇〇円程度に止まる……」と認定している。

本件においては、損害額の多少や、鍵破損についての損害賠償責任の所在を問題としているものではなく、原判決認定の「ドアをこじ開けて、ドアの鍵を破損して大勢で二階事務室に入った」組合員らの行為そのものを、企業秩序を乱したものとして就業規則に照らして問責しているものであるから、右損害額や責任の所在を考慮する必要は毛頭ないものである。

六 以上のとおり、上告人会社は、補助参加人組合所属組合員による右違法行為について、組合員各人毎に責任の軽重と情状を考慮した上、就業規則に照らして、懲戒処分を決定し、出勤停止、減給、始末書提出、班長解任、組長解任の各懲戒処分を通告したものであり被処分者各人に対する就業規則の適用条項は別紙記載のとおりである。補助参加人組合員による前記行為は終夜営業を営む上告人会社の業務を著しく阻害した外、上告人会社の企業秩序を破壊する極めて悪質なものであり、当日二部勤務者については、無断職場離脱を加重した上で上告人会社は企業秩序維持の為、やむなく右懲戒処分を決定、通告したものであり、本件懲戒処分について、不当労働行為の問題が介在する余地は全くないものである。

七 右のとおり、本件懲戒処分を不当労働行為である旨判断した原判決は、採証法則に違背し、労働組合法第七条一号、三号の解釈適用を誤った著しい法令違背であって、判決に影響を及ぼすことが明らかであるから破棄を免れないものである。

第二点 原判決は、上告人会社がなした補助参加人組合所属組合員長崎、同橋本に対する昭和五一年七月二二日付、同北原に対する昭和五一年八月七日付各配置転換を、不当労働行為であると判断しているが、これは採証法則、経験則に違背し、審理不尽、理由不備の違法があり、労働組合法第七条一号、三号の解釈適用を誤った著しい法令違背であって、判決に影響を及ぼすこと明らかである。

一 原判決は、右各配転について、「配転の業務上の必要性も人選の合理性も認められない」としているが、右認定は、右配転の背景にあった当時の上告人会社のおかれた厳しい状況についての判断を欠くものである。

前記のとおり昭和五一年七月当時、上告人会社は主要取引先からの返品が相次ぎ、立入検査を受ける事態が発生し、会社存立にかかわる非常事態に直面していた事実については、原判決は何等の判断もしていない。前記のとおり管理部検査課の組編成替について、「さしたる必然性もない」と一方的に判断していることと同様である。

二 昭和五一年当時上告人会社においては、全従業員の四三パーセントを心身障害者が占めており、職場に適応し得る能力の関係で極度に職場への人的配分が制約されていた。本件配転は、かかる制約された状況下で、且つ、非常事態の中でなされたものであって、大労組組合役員を含めての全社的配転としてなされたものであるから、当然のこととして、補助参加人組合所属組合員もその対象者として採り上げざるを得なかったものである。

管理部検査課においては、過去において管理職以外は全員障害者で運営されていた実績があったことから、前記の制約された状況下において、やむなく、当時検査課に配属中の健常者三名(長崎、橋本、黒崎)を配転の対象者として採り上げたものである。

原判決は、長崎、橋本について、両名ともに組合の役職者であること及び配転先の業務についての経験のない点を指摘しているが、組合の役職者であることについては、同時期に配転された大労組の組合役員とて同様である。前記のとおり人的配分が制約されていた上告人会社においては、やむを得ない問題と言わざるを得ない。右両名が、配転先における業務について経験がないことは、原判決指摘のとおりであるが、上告人会社としては、右両名の健常者としての能力に期待して配転を決定実施したものである。更に、原判決は、配転後に右両名が従事した仕事内容について指摘しているが、これは、原審において、上告人会社が主張立証したとおり、右両名は勤労意欲に欠け、無断欠勤等欠勤が多く、上告人会社が配転に当たって期待した両名の能力が発揮されなかったことによるものである。

三 北原の配転について原判決は、「……調合部門を充実強化する緊急性があったとも認められない……」と認定している。原審において、上告人会社が主張立証したとおり「色調についてのクレーム」が生じていた関係で、当時調合部門一名欠員の補充として、有経験者である北原を検査課より調合部門に配転補充したものである。

四 以上のとおり、本件各配転は、非常事態に対処し、退職者の補充を目的としてなされた会社的配転であり、且つ、同じ工場内における職場の変更にすぎないものであるから、不当労働行為問題が生じる余地は全くない。

右配転を不当労働行為であると判断した原判決は、採証法則、経験則に違背し、審理不尽、理由不備であって、労働組合法第七条一号、三号に違背する著しい法令違背があり、判決に影響を及ぼすこと明白であるから破棄を免れないものである。

以上

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例